Development Project of Kawasaki Station west exit『KAWASAKI DELTA』
Kawasaki City, Kanagawa
Landscape Design by STGK Inc.
Photos by Takahiro Shimizu, Editorial desk*
多様な川崎を見つける場所
東西に長く伸びる川崎市には、緑豊かな多摩丘陵や生田緑地のある内陸部から、人口が集中する人気の居住エリアを持つ中心部、日本を代表する工業地帯を抱え、独特の夜景が美しい臨海部まで多様性に溢れる風景がある。同時に、川崎市で暮らす人々もまた多様であり、この多様さを受け入れてきたことが現在の川崎らしさを形作り、川崎のとても大きな強みになっていると言えるであろう。そんな川崎を繋ぐのが多摩川。川崎市の北端に流れる多摩川は市内全域に豊かな自然環境と恵みをもたらしてきた。本計画地のランドスケープでは、そのコンセプトを「URBAN to NATURE ~多摩川を巡る旅~」と称して、まるで多摩川を巡りながら川崎の様々な風景に出会うような、変化と多様性のある空間づくりを目指している。
計画地は、ホテル棟、オフィス・商業棟のふたつのビルに挟まれることで生まれた3つの広場的な空間をリニアな通路空間が繋ぐように構成されており、ホテルや商業施設を利用する人々やオフィスに通う人々、さらには計画地の先にある住宅地から駅に向かう人々など、様々な目的を持った人々がこの外部空間を移動している。この空間の構成を川崎を象徴する多摩川の流れに見立てデザインしている。3つの広場は「SATOYAMA」「URBAN」「BAY」と多摩川の上流から下流のあり方に擬えてテーマを設定し、それぞれの居場所のデザインや植栽計画など特徴を持たせた。また、それ以外の場所も「電車が見える」「飲食店の待ち合わせに使える」「待ち合わせができる」など日々の使われ方やその空間特徴を読み込みながら多種多様な居場所を計画し、人々が憩える計画としている。
これらの居場所をつなぐ役割を担っているのが空間の床である。多摩川の水面の揺らぎをモチーフに同一のモジュールで石種や仕上げを変えながら、連続した1本の流れをイメージしてデザインしている。ゆらぎの中には、川崎にまつわる名所や風景など、川崎の個性を構成する場所などの名称を掘り込んだ「多摩川・川崎タグ」と呼ばれるプレートが埋め込まれ、それらを追いながら移動することで、川崎の見所を知ることができるようになっている。川崎駅前というこの場所で、川崎が誇る多様性を感じながら思い思いの時を過ごす、この場所が人々にそのように使われてほしいと思っている。
(文/ STGK Inc. 熊谷玄)
それぞれの居場所に応じたファニチャ計画
「BAY AREA」の広場は、隣接するミューザ川崎やラゾーナ川崎・川崎駅東口方面へとデッキでつながる交点にあり、比較的通行量の多い場所となる。そうした中で待ち合わせや休憩どころになる設えとしてのベンチを計画した。ベンチの配置・形状は雁行配置のロングベンチに加え、広場を囲う背もたれ付きのベンチによって湾のような大小の領域感を作り出している。 「URBAN AREA」のオフィスエントランス側には、エントランス前の大空間を活かし、コンサートなどステージを必要とするイベントを行える大きな縁台型ステージを計画した。ステージの雁行した平面形状や段状の不規則に重なり合うステップは、通勤通学で通り抜ける人々のたまり場や遊び場となり、また広場の印象付けになるような形を目指してこの形状に行き着いた。また、オフィスエントランス脇の通路沿いには、オフィスで働く人がランチや休憩がとれるカウンターテーブル、面と向かい合って会話ができるようなローテーブルセット、気分で選べる植栽帯の縁に取り付く一人掛けベンチを配置した。カウンターテーブルには、スツール付きと立席の2種類あり、立席の方はオフィスエントランスから線路へのビューの妨げにならない配慮としてこの形状となった。線路前エリアでは、オフィス前の通路から線路側へ植栽帯を挟んだ先は低いフロアとなっており、人通りのある通行動線から離れ、より線路に近づきながら電車を眺められる展望スペースとしてベンチを配置した。
「SATOYAMA AREA」ではオフィス棟の同フロア飲食テナントが面する屋外通路沿いに、入店待ちやランチ後の日当たりの良い時間に寛げるような場所として、ゆったりと座れる背もたれ付きのベンチを計画した。
(文/ STGK Inc. 静谷洋紀)
市内最上流の里山から河口域まで多摩川の植生変化を再現した植栽計画
北東から南西にわたって長くのびる形状をしている川崎市では、同じ市内でも多摩川に沿って河口域・中流域・上流域それぞれで見られる植物は大きく異なっている。この異なる植生を、川崎駅により近い北東側から順に「BAY AREA」「URBAN AREA」「SATOYAMA AREA」と3つのゾーンに分けて再現している点が、カワサキデルタの植栽の最大の特徴である。
川崎駅より最も近い「BAY AREA」は、ビロウやマツなどの臨海域に適した植物が目を惹き、カワサキデルタの玄関口に相応しい活気を感じさせる。ここから南西へと歩を進めるに従い、徐々に上流域で見られる植物が姿を現すようになっている。中流域である「URBAN AREA」は、実際の地図でいうならば溝の口辺りであろうか。東京都心部により近い洗練されたイメージを植栽で再現するべく、濃淡の異なるカラーリーフを取り入れるなどして洗練されたデザインを心掛けている。そして最上流に位置する「SATOYAMAAREA」は生田緑地の辺りをイメージしており、丘陵域の里山で見られる草木を取り入れ、一際野趣を感じさせる雰囲気。最も樹木の種類が多く、落葉樹を多数取り入れているため、春の新緑や秋の紅葉など季節ごとの変化を楽しめる。また、こうした地域性の再現はグランドカバーにおいても確認でき、「BAY AREA」から順に砂・砂利・バークチップを用いることで、河口域から里山までの多摩川流域の環境を再現している。
川崎市の新しい玄関口を担うこの施設は、多摩川と共に歩む同市の環境をコンパクトにまとめ、広く利用者に伝える役割を担っていると言える。
(文/編集部)
川崎駅西口開発計画『カワサキデルタ』
所在地神奈川県川崎市幸区大宮町1-5
事業主東日本旅客鉄道㈱
主要用途オフィス、ホテル、フィットネス、商業他
ランドスケープSTGK Inc.
植栽計画SOLSO Architectural Plant & Farm
建築設計㈱JR東日本建築設計
施 工大成建設㈱
規 模敷地面積約12,400 ㎡、建築面積約11,000 ㎡、延床面積約137,000 ㎡
竣 工2021年4月(カワサキデルタ街区全体)
植 栽ウワミズザクラ、オギ、コブシ、シラカシ、ニシキギ、ブラシノキ、ヤブツバキ、ヤマツツジ、ユキヤナギ ほか…